新しい出来事

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 冬は暖冬と言われ、春は短く早くも初夏の風が吹くようになり、今年の夏も去年より暑くなるとニュースで言っていた。また汗だくの通勤ラッシュを迎えるかと思うとテンションも下がるというものだ。高齢の独居でいる隣りの家のこともご近所ながら心配になるし。 本格的な夏も近づき今井のおじいちゃんの記念すべきその日がやってきた。僕は以前友達の結婚式の時に新調したスーツを着て行くことにした。招待状を見ると会場は最寄駅から2つ目の駅で所要時間は電車で10分程度。駅を下りると目の前に大きな建物が立ちはだかる。  煌びやかにLEDが散りばめられたホテルの入口には〝華の間〟今井家・赤坂家ご両家様とあった。  親しい友達の結婚式なら久しぶりに会う仲間と一緒に参列し、くだらないことをくっちゃべってワイワイ楽しみながら行くだろうけど、年配者の結婚式なんて聞いたことも見たこともない。ただ参列するだけなのに何故こうも緊張するのだろう。 エレベーターで2階へ上がると左の奥に華の間と書かれた看板を見つけた。受付には今井のおじいちゃんより若干若いかな? という2人が立っていた。 いやいや、ここは葬儀場じゃないぞ。その立ち姿、年季の入った礼服は婚礼の雰囲気が感じられない…。そう思いながら受付に近づいていった。 「本日はおめでとうございます」 今井のおじいちゃんは祝儀はいらないと言ってたが、大人としてそうはいかないのは知っている。些少だがきちんと挨拶をしながら受付にそれを渡した。 「あっらぁー、徳ちゃんも若い友達いたんだねー。うちらの仲間内だけかと思ってたけど若い子が来ると場が明るくなるねー!」 ーーテンションだだ落ち。ハハハ…苦笑い。
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