5人が本棚に入れています
本棚に追加
披露宴は次第にカラオケ大会のようになっていて、新郎新婦もデュエットで歌い、いわば打ち上げのような雰囲気で楽しそうだった。のど自慢な人達が次々とマイクの順番を待ち、残りの時間をカラオケで使い切ろうと思っているのか、披露宴の主導権はゲートボール会全体に委ねられたようだった。そんな一風変わった披露宴は大盛況となり、時の経つのが早く感じられた。
司会者がマイクを握りしめて周りを窺った。
「えー、そろそろ時間となりました。最後に新郎の父親から参列者へご挨拶…となるはずですがー、我々はもうこの歳ですし父は健在ではないんですな。居たらビックリだ、いくつになんだかなぁ。でも新郎の父親は天国から息子の晴れ姿を見てっから、ほら。あそこ!」
と天井を指差した。
〝え?〟と参列者が一斉に天井を見上げる。
「見えるわけねーがな。フハハハ…」
と冗談で場を湧かせ、僕も思わず天井を見てしまった。
「この歳になって結婚なんてと思っていたけどー、生き返るにはいい選択だー。あいや、まだみんな生きてますな。フハハ…」
この時間を名残惜しそうに冗談を言っては笑いを取り、シメの言葉を言いたくないようにも見えた。
「そうしたらさ、ゲートボール会の会合は今度から徳さんの家にしような! 一品持って集合な」
何だよ、ここはゲートボールの会の集まりじゃないだろう、全く…。打ち合わせしてんじゃないっつーの。
「ほんじゃ、今日は皆さんお忙しい中新郎新婦のためにお集まりいただき有難うございましたー」
準備してあった賑やかなBGMが流れ、新郎新婦の退場を参列者の拍手で見送り披露宴は盛況に終わった。
最初のコメントを投稿しよう!