社長、意外な過去ですね

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     (じゅん)に、 「とりあえず、家の中のもの、十個捨ててみろ。  今すぐにだ」 と言われた葉名(はな)は、 「えっ?  今すぐですか?」 と訊き返した。 「こういうのは、明日からと言わず、少しのことからでも、すぐに行動を移すことが大事だ。  日々、続けていれば、そういう習慣ができてくるからな。  習慣づけば、逆にやらないと気持ち悪いくらいの感じになるだろ」  腕を組み、命じてくる准に、はい、コーチ、と心の中で思いながら、葉名はゴミを捨ててみた。  テーブルの上のティッシュ。  賞味期限が切れているのにまだ取っていた、すでに開いているお菓子の袋。  そして、それを止めていたゴム。  チョコの包み紙。  洗面所のティッシュ。  朝忙しいのに、ビタミンをとらねばと、むいて食べたキッチンのネーブルの皮。  水を切っていた生ゴミ。  キッチンを拭いたお掃除用のウエス。  テーブルを拭いたお掃除用のウエス。  もう結構汚れてしまっていたフローリングワイパーのシート。  葉名を手を止め、周囲を見回した。 「あの~、十個捨てたのに、なにも片付いてないんですけど」 「いや……、そういう十個じゃないだろ」  それは最初から捨てる予定のただのゴミだ、と准に言われる。
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