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真夜中
美羽の通う学校の屋上で、雨流と摩耶がいた。
「…アイツ、まだ自分が死んだって自覚していないのか」
「あっという間のことだったからね。飲酒運転してた車に突っ込まれて、自覚も何もなかったんでしょう」
2人は並んで夜の街を見下ろした。
「だから繰り返してしまうのよ。生きていた頃の行動を。そのうち、気付くんじゃないかって思っていたんだけど…」
「アイツ、意外と頑固だったんだな。オレも死んでから気付いた」
「雨流は台風の日、学校からの帰り道で亡くなったんだっけ?」
「ああ。近道しようと思って、ぬかるんでいた土手を歩いている時に足を滑らせて、増水してた川ん中に落ちた。オレはしばらくもがいていたせいで、自分が死んだことは自覚してたんだ」
「でもよく学校へ来れたわね。あんたみたいな死に方をすると、地縛霊として亡くなった場所に留まるってウワサだけど?」
「ああ、正直危なかった。強く拒絶しなきゃ、オレも引きずり込まれていた」
そのことを思い出したのか、雨流はブルっと身震いした。
摩耶は聞かない。
『何に』、引きずり込まれそうになったのか。
聞かずとも、ずっとこの場で見てきたので、分かっているのだ。
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