真夜中

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「そういう摩耶は、ここで死んだんだっけ?」 「そっ。アタシはここから飛び降りたの。だから地縛霊よ」 摩耶はケロっと言った。 「また何で自殺なんかしたんだ?」 「当時、いろいろイヤなことが重なってたの。両親が離婚したり、恋人には振られたり、成績が落ちたり。それでも悩みを打ち明けられる人がいなくて、耐え切れなかったのよね」 強い夜風に揺れる髪を抑えながら、摩耶は遠い眼をした。 「だからアタシは誰にも気付いてもらいたくはない。けど…美羽は違うみたいね」 2人は何も言わず、視線を合わせた。 「…何人かはアイツの声を聞いたみたいだがな」 「聞こえた人はゾッとするでしょうね。亡くなった人の声が聞こえるなんて、怖いもの。普通は」 「そう、普通は、な」 突然、三人目の声が屋上に響いた。 「先生」 「やあ、雨流。まだ留まっていたんだな」 歴史を教える先生が、二人に近付いた。 「先生に言われたくないな。先生だって、病気で三か月前に死んだんだろう?」 「お前さんは一ヶ月ほど前だったな。…美羽くんは記憶の混乱があるようだ」 美羽が生きていた頃に、2人はすでに他界していた。 だがそのことに、気付いていない様子だった。     
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