家政婦は見た

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 私がこの家にお仕えするようになって、もうすぐ半年が経ちます。旦那様の強いご希望で、週二回の勤務が週三回になったくらいしか変化はありません。相変わらず旦那様に奥様は見えず、私も旦那様の前では奥様はいないものとして振る舞っております。それでも、奥様は旦那様に寄り添い続けておられました。  奥様は旦那様を深く愛しておられる。旦那様もまた、奥様を想っていらっしゃる。それは間違いありません。  ただ、あの日見た奥様のお顔が忘れられず、時おりおかしなことを考えてしまうのです。  旦那様は、私によく奥様のことを話されました。 「妻は料理が得意でね。特に筑前煮が旨かったよ。いや、石崎さんの料理も旨いけどね」  私は旦那様に奥様のお料理を食べさせてあげたいと、奥様に作ることを提案致しました。  いつも、私が来ない日の分も作り置きして帰っています。ですが、私が作ったと見せかけて奥様が作った筑前煮をお食べになれば、奥様が見えるようになる切っ掛けになるのではと考えたのです。ですが奥様は「出来るだけ、主人から離れたくないの。石崎さん作ってちょうだい」と言われました。ではせめてレシピをとお伺いしましたが、ネットで見た通りに作っただけだだからと、結局、レシピは教えていただけませんでした。  仕方がなく自己流の筑前煮を作っていると、以前、旦那様が寝言で「まい」と仰った時のことを考えてしまいます。
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