家政婦は見た

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家政婦は見た

「お帰りなさいませ、奥様」 「ただいま、石崎さん」  扉を開くと、紙袋を下げた奥様が立っておられました。 「主人は?」  奥様はほとんどのお時間を、旦那様とご一緒されています。たまにお一人で外出なさっても長時間離れることはなさらず、帰って来られるとまず旦那様のことをお尋ねになりました。それはまるで、小さな子供を預けて出掛ける母親のようでございました。 「ダイニングでお茶をお召し上がりになっております。先程まで、私に昨日のことをお話しくださっていました」 「そう……。昨日は新しいバイトの子がいてね、分かってもらうのに苦労したわ…」  そう言って、奥様は綺麗なお顔を曇らせました。
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