ルアン 高1のときのある日

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有川の要望に応えて、ルアンが自動販売機で水を買って帰ってくると、有川はそこで、体を折り畳んで泣きじゃくっていた。 「有川、どうした」 いまの間に何が起きたのかと、有川の顔を覗き込むようにルアンが声をかけると、有川は必死に溢れ出る涙と鼻水を、持っていたハンカチで拭いながら、 「……やっぱ、こんなの、耐えられない……」 と、涙でぐちゃぐちゃになった顔と声でそう言った。 ルアンには、有川のその気持ちが痛いほど分かった。 とりあえず買ってきた水を有川に持たせると、ルアンは次の瞬間には行動に移っていた。 頭で考えるよりも早く、気付いたときには近くにあった女性用の服屋に入っており、何でもいいからとりあえず早く、一番安い帽子とワンピースを買っていた。 「有川、しっかりしろ」 そうして買い物をして有川のところに戻ってくると、有川の顔を上に向かせ、いま買ってきたばかりの服を有川に握らせて、 「着替えに行くぞ」 と言った。 「せんぱい……」 ルアンは酷い顔の有川を無理やり立たせると、多目的トイレの前まで引っ張って行った。 そして服と共に有川を強引にトイレに押し込むと、その前で有川が出てくるのを待った。
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