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そのまま岩田がほぼ一方的に、中学のときのことや、高校でのことを話しながら、二人がラーメン屋まで向かっているとき、ルアンはすれ違う通行人の中の、ある一人に目が止まった。
それは、ルアンたちの前方から来て、一瞬ルアンの顔を見た、学ランを着ている短髪の男子中学生だった。
ルアンはその人物に見覚えがあった。
岩田の話を聞き流しながら、目が、顔が、その子のことを追う。
「どうした?」
突然後ろを振り返ったルアンに、岩田が話を中断して訊ねる。
二人の足が止まる。
「いや……いまの……」
と言いかけて、まさかそんなはずはない、とルアンは思った。
「何だよ?」
「いや、いま有川が……」
「ありかわ?誰だそれ」
「俺らの一個下の……」
「あ~、あのオカマの!」
岩田がそう言った瞬間、ルアンは鋭い目で岩田のことをキッと睨んだ。
「なんだよ……」
岩田が怯む。
「てか、そんなに気になるんなら声かければいいじゃん。おい有川!!」
ルアンが返事をする前に、岩田はもう声を発していた。
岩田は大声で叫んだが、既に遠くに行っていた有川らしき人物は、振り返ることもなく、そのまま行ってしまった。
「気のせいだったんじゃねぇの?」
「……かもな」
「行こうぜ」
ルアンの心の中には、あれがもし本人だったら……という不安が渦巻いていた。
というのも、ルアンがまだ中学にいた頃の有川は、学ランを着ていながら、髪も長く、化粧もしていたからだ。
ルアンと有川は、共に服装頭髪検査に反抗していた仲だった。
しかしルアンの卒業後、取り残された有川が、学校で、権力に負け、"男"になるよう"矯正"されてしまっているのだとしたら……。
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