インコ失格

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夕方になり、夜になり、瑞樹ちゃん遅いな。と考えていた時でした。 「ピティちゃん、ただいま」 瑞樹ちゃんが帰って来ました。 「ピー。ピー。ピー」 先輩とのデートの内容が知りたくて私は一生懸命鳴きました。 「ピティちゃん、聞いて、今日ね先輩に・・・」 先輩に?まさか何かあったんじゃ。 「先輩にキスされそうになったの。まだ付き合ってもいないのに」 初デートでキスだなんて 先輩とやらは紳士ではないようです。 「どう思う?付き合ってっていう事なのかなー」 まさか。それなら正式に付き合いを申し込むでしょう。少なくとも私だったらそうします。ですが瑞樹ちゃんは純真無垢な良い子なので変な勘繰りはしないようです。 「またデートに誘われちゃった」 瑞樹ちゃんは歌を口ずさみながら私の餌を用意してくれます。この頃には私は大人用の固い餌が食べられるようになっていました。 「そうだ。友達に報告しなくちゃ」 瑞樹ちゃんはスマートフォンを手にとり、ラインと呼んでいるアプリを開きました。私は何時も瑞樹ちゃんの手に乗っていたので、今日もまたそれを読む事ができたのです。 『由奈、今日デートして来たよ』 『瑞樹ー。良かったね。どうだった?』 『凄く楽しかった。それでね。うふふ』 『どうしたの?何かあったの?』 『もう少しでキスするところだったの』 『えー。いきなり』 そうです。由奈ちゃんの言う通り早すぎます。私は心配で堪らなくなりました。そうして私は思い立った様に両手を開いて羽ばたきました。瑞樹ちゃんが心配するようにいつもより長く部屋の中を飛びました。 10回部屋を回った所で私は疲れ果て、再び瑞樹ちゃんの手に戻りました。 「ピティちゃん、いつもより沢山飛んだね。偉い。偉い」 瑞樹ちゃんは私の口をチョンチョンと叩くと軽くキスをしてくれました。 私は涙が出る程嬉しかったのを覚えています。 ああ。次に生まれる時は人間に産まれたい。インコなんて嫌だ。 私はインコ失格です。 その夢を失くして、 生きてゆけるかどうか考えなさい。 私は瑞樹ちゃんとの恋が実る事、それだけが夢でした。毎日変わらね餌の内容も文句が無く、家族と引き裂かれてしまった事も過去の話です。 私は何と言われようとも前を向いて生きていました。 image=513380357.jpg
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