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それから、次の週も瑞樹ちゃんはデートに行くと言って張り切っていました。
「ピティちゃん、今日は何を着て行ったらいいかな?」
「ピー。ピー。ピー。ピー」
黄色いワンピースは止めにして、それは凄く可愛いから。先輩の前では着ないでよ。
私は何時もの様に、籠の中で鳴きました。私の声が届くように、私の思いが届きますようにと何時もそう思いながら鳴いていたのです。
「そうだ。少し暖かくなってきたからワンピースなんてどうかな?」
ああ。黄色いワンピースは駄目だったら。
「あの、去年買ったワンピース着て行こう」
瑞樹ちゃんはクローゼットの中から、私の大好きな黄色のワンピースを出して、舞うようにベッドに座りました。
私は絶望的になりました。これで先輩は瑞樹ちゃんに本気になるに違いない。私の初恋も終わるのかな。
そう思うと悲しくなり、いつものサービス精神も発揮できす、籠の中で後ろを向き、ずっと壁を見ていました。
「ピティちゃん、行ってくるね」
私は一羽、部屋に取り残されました。しょうがない。私はインコです。タバコという物を吸ったり、お酒という飲み物を飲んでやり過ごすことも何も出来ず、籠の中にある鈴の玩具だけ。それだけで瑞樹ちゃんが帰って来るまでの長い時間、我慢しなくてはならないのです。
瑞樹ちゃんが出掛けたのは午前の11時だったので、私は8時間程、玩具で遊んでいました。
「ただいま。ピティちゃん」
瑞樹ちゃんが帰ってきたようです。私は嬉しく、自分の名前を喋ろうとした時です。瑞樹ちゃんの黄色いワンピースが汚れている事に気がつきました。
(あれっ。どうしたのだろう)
瑞樹ちゃんが泣いている様に見えました。まさか、何かあったんじゃ。私は気が気ではなくなり、瑞樹ちゃんに問いかけました。
「ピー。ピー。ピー。ピー」
どうしたの?瑞樹ちゃん大丈夫?
「ピティちゃん、ピティちゃんあのね。先輩ったら公園で・・・」
そう言うと瑞樹ちゃんは声をあげて泣き始めました。
「ピティちゃん、私は嫌だって言ったのに。服の、服の上から私の胸を・・・」
もうそれ以上聞きたくありません。けれど瑞樹ちゃんは話を続けます。
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