インコ失格

8/9
前へ
/9ページ
次へ
「それでね、公園のベンチから落ちて、それなのに先輩ったら、私の上に乗ってきて」 ああ。やめて。それ以上聞きたくない。 「私は泣いたの。そうしたら、つまらない女だって。そう言い残して帰ってしまったの」 そう言うと瑞樹ちゃんは膝をついて泣き崩れました。 良かった。瑞樹ちゃんのバージンは守られたようです。ですが先輩は何て酷い男なのでしょう。私が心配した通りです。 それを聞いた時何故か私は死のうと決めました。 死んで人間に産まれ変わって、瑞樹ちゃんを守るんだ。そう心に決めると次に死ぬ手段を考えました。この狭い籠の中には自殺できるような物は何もありません。 どうにか、籠を出て、部屋の外にでよう。 外の世界への憧れ。 そんな気持ちも幾分かあったに違いありません。部屋の外から聞こえてくる、名前も知らない鳥達の鳴き声、いつもとても楽しそうに聞こえたのです。 「チュン、チュン、チュン、チュン」 最後にあの鳥達と仲良くなりたい。どんな色をしているのだろう。お父さんや兄弟皆と同じ綺麗なブルーの色をしているのだろうか。 私は瑞樹ちゃんが洗濯をしている時、籠の中から出して貰える事があります。その時を狙って外の世界に出ようと思いました。そうして死ぬ手段は後から考えてみるんだと。それを考えた時、すでに私は次は人間に生まれ変われるような気になっていました。 「ピティちゃん、昨日はゴメンね。泣いたりしちゃって」 次の日瑞樹ちゃんは元気に朝の挨拶をしてくれました。その時です。 「おはよう」 私は挨拶が出来た事に自分でもびっくりしました。 「おはよう。おはよう」 私は何度も喋りました。 「ピティちゃん、おはようが言えるようになったの?偉いねー。よし、ご褒美に葉っぱをあげるね」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加