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さらにしばらく歩いたが、他にモンスターと出会うことはなく、目的の草原まで無事にたどり着いた。
日はまだ沈んでいなかったが、早めに火を起こし、寝床を作った。
「お肉を食べるのです。」
マノンは上機嫌だった。拾った枝に肉をぶっ刺し、炉の近くに並べている。幼い顔つきなのに、やることがワイルドだ。
「よかったですね、思わぬ形でお肉に出会えて。」
「はいなのです!」
イリスはマノンの横に座り、マノンが肉を焼くのを眺めていた。
「しっかし、きれいに捌いたな。」
「はいー、ソーマ様の短剣の切れ味が良かったので、美味しい部位も無駄なくさばけたのです。焼いておけば明日のお弁当にもなるのです。」
「たしかにな、これだけの量があるもんな。よし、俺も何か作るか。」
「ソーマも何か作るのですか?」
「ああ、スープでも作ろうかと思ってな。」
俺はマノンのリュックから鍋を取り出し、準備を始める。
「そういえば、市場で鍋と何やら食材を買い込んでいましたね。」
「ああ、もう十分暖かいけど、夜はそれなりに冷えるからな。疲れた身体には良いと思ってな。マノン、ちょっと肉を分けてもらえるか?」
「もちろんいいのですよー。」
マノンから肉を少量分けてもらい、鍋に入れて炒める。そこに買っておいた野菜を刻んで煮込む。
「それは何ですか?」
「これか?」
俺が取り出した何種類かの小瓶をみて、イリスがきいてくる。
「これは、薬師の先生のとこでいろいろ調合してる時に作った調味料だよ。数種類のハーブと香辛料を混ぜて作ったオリジナルだ。肉に直接ふりかけてもうまいが、今日はスープしてみようと思ってな。」
「へぇー、ソーマは何でもできますね。さすがスキル変人。」
「変人言うな。」
調味料を入れ、塩を少し足した。後は野菜が煮えるまで待つだけだ。
「?おいマノン、まだその肉生焼けじゃないのか?」
マノンが炉に刺した肉の一つを取ってかぶりつこうとしていた。
「大丈夫なのですよー。今日捌いた新鮮なお肉なのです。半生くらいが一番おいしいのですよー。」
そういうと俺の制止も聞かずにかぶりつく。もぐもぐしながら満面の笑みになる。
「マノンは何でも半生くらいがちょうどいいらしいのです。」
「もぐもぐ…なんでも素材のそのままの味が一番なのです。」
「…もしかして、一人でいた時は仕留めたモンスターを生で食ってたのか?」
もぐもぐしながらマノンはうなずいた。
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