遠出はお好きですか

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「ソーマもイリスも、マノンのことを聞かないのですね。」 「マノンのことって、昔のことか?」 「そうなのです。マノンは獣人のハーフです。それだけでいろんな人が私のことを聞きたがったのです。でも、二人は何も聞かずに仲間にしてくれたのです。」 「そうだな。マノンのことをもっと知りたいってのはあるよ。でも、それはマノンが話したくないこと聞きたいんじゃくて、マノンが俺たちに知ってほしいことを知りたいんだよ。俺も、イリスも、お互いに言ってないことだってあるさ。でも仲間に変わりはないし、これからだって変わらないさ。たとえ、過去に何かがあっても、俺の知ってるマノンはマノンで、イリスはイリスさ。」 「…そう言ってくれると嬉しいのです。」 うつむき加減になりながら、マノンは言った。 マノンがどんな生活をしてきたのか、想像がつかない。マノンの表情を見る限り、あまり良いものではなかったのだろう。 「…マノンは、二人にはマノンのことを信じてほしいのです。」 「もちろん。俺もイリスもマノンのことを信じてるさ。」 マノンの表情は何か懇願するような、怯えた表情で、印象的だった。 互いに特にこれといった話題はなく、見張りの交代の頃合いになったのでおれも寝床で横になった。 夜が更けていく。 日が昇るまで、俺はうまく寝付けずにいた。身体の方は十分に休めたが、マノンのあの怯えた表情が忘れられずにいた。 「おはようございます。まだ早いですよ?もうしばらく横になっていてはどうですか。」 イリスが焚き火に薪を足しながら言った。 「いや、もう十分休めたからいいや。おはようイリス。イリスはよく眠れたか?」 「私は十分眠れましたよ。案外遠出で身体も疲れていたみたいです。交代までぐっすりでした。」 「そうか、マノンの様子はどうだった?疲れた様子はなかったか?」 「ええ、少し眠そうにはしていましたが、元気でしたよ?どうかしましたか?」 「いや、それなら良いんだ。…朝飯は何だ?」 イリスに朝食のメニューを聞きながら、俺は寝ているマノンの方を見た。 「…ソーマ、私が寝ている間にマノンに変な事してないですよね?」 「してねぇよ。」 何を勘ぐったのか、イリスが疑惑の目を向けてくる。 俺はそれを相手にはせず、朝食ができるのを待った。
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