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更に日が昇り、マノンも起きてきたので、三人で朝食を取った。
イリスはまだ俺が何かしたのではと疑っており、マノンにあれこれ聞いていた。
もちろん何もないのでマノンも何のことかさっぱりわからないという顔をしている。
朝食は簡素なものだったが、おいしかった。身支度を済ませ、森へと向かうことにした。
森はそこそこ高レベルのモンスターが出てくることもあるらしい。俺とイリスはいいが、マノンは専門職になったとはいえ、レベルが心もとない。戦闘ではうまく立ち回らないといけない。
「今回の討伐目標はどの辺りにいるんだ?」
「鎧カブトは森の奥ですね。居合カマキリは森の入り口付近にいると聞いたのですが…、ソーマの索敵にも引っかからないですか?」
「そうだな、今のところはまだ何にも。」
今回は鎧カブトと居合カマキリの二種類の昆虫型モンスターの討伐が目的だった。クエストとは別に、森に生息している貴重な薬草や植物も採集することも目的の一つだった。
「昆虫は食べても美味しくないのです。」
「…食べたことはあるんだな。」
マノンは相変わらずだった。昨日の夜にみせた表情はなかったかのように明るかった。
森の入り口でもう一度索敵をかけるか、特に反応はなかったので、そのまま森に入った。
結構深い森のようで、森の中は薄暗く、生い茂った木々の間からわずかに日が差し込む程度だった。
「意外と視界が悪いな。足元とか注意しろよ。」
「わかってます。ソーマこそ索敵を怠らないでくださいね。」
「もぐもぐ…気をつけるのです。」
マノンはいつの間にか弁当用の肉を食べていた。討伐目標の他に、食料の調達も必要かもしれない。
「!待て、何かいるぞ。」
さらに奥に進んだところで、索敵に何か引っかかった。千里眼で周囲を確かめるが、敵影は何も見えない。
「ソーマ!上です!」
イリスの声で見上げると、黒い塊がいくつも降り注いで来た。ステップを使いかろうじで躱す。
ズシン、と重量のある何かが俺のいた場所に落ちた。
「出ましたよ、鎧カブトです!」
「これがか?」
一見するとでかいダンゴムシのようだったのだが、黒い塊が足を伸ばし、折りたたんでいた角を伸ばすと、よく見るカブトムシの姿になった。サイズは人の子供くらいはあるだろうか。
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