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ドドドドドと、背後から凄まじい量のモンスターが追いかけてくる。
「くっそおおおおおおおお!あのリス絶対ゆるさねぇぇぇぇぇ!」
「ソーマソーマソーマ!私にもっと支援魔法かけてください!やばいです!これはやばいです!」
俺とイリスは森の中を全力で逃げる。
モーニングバードの、恐ろしい能力は、自分が生んだ黒い卵を他のモンスターにわざと食べさせ、そのモンスターを洗脳することにある。
洗脳されたモンスターは、普段は何事もなく生活しているが、一度モーニングバードからの号令がかかると、今みたいに集団で襲ってくる。
「あとどのくらいだ、森を抜けたら本当に追いかけてこないんだよな?」
「そのはずです!それよりソーマ!早く支援魔法!」
俺は走りながら、イリスの肩に触れ支援魔法をかける。
後ろを振り返る余裕もない。とにかく、こんな量のモンスターを相手にはできない。
森の出口は、まだ見えない。追い付かれたら最期だ、走り続けるしかない。
「よし!出口だ!イリスもうひと踏ん張りだ!」
「ハァ!ハァ!ハァ!」
イリスの息がかなり上がっている。
俺は荷物の中から、ダイナマイトを一本取り出し、火をつけて後ろに投げる。
後ろから爆発音が聞こえる。だが、モンスターが立ち止まる気配はない。
森を抜けた。何とか追い付かれずに済んだ。
イリスはその場に倒れこむ。俺は振り返り、剣を構える。
モンスターは森の中からは出て来なかった。反転し、森の奥へと帰っていく。
それを見届けて、俺もようやく、座り込む。
「危なかった!本気でちょっと死を覚悟したぞ。」
「………。」
イリスは死んだようにうつ伏せに倒れたまま動かない。
そのイリスの首元に手を当てて回復魔法をかけてやる。
「…ありがとうございます。」
「…もうちょっと休んでから、町に帰ろうか。」
そういって、俺は空をゆっくり見上げた。
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