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今日は日中から雲っていて、雨がいつ降ってもおかしくなかった。クエストが終わるまではもって欲しかったが、とうとう降りだした。
「雨ですか、もう大方クエストも片付きましたし、今日は引き上げますか?」
「そうだな、視界も足場も悪くなるし、戦闘しにくくなるだろうからな。報酬は減額になるが、仕方ないだろ。」
今日は久しぶりに三人でクエストに出ていた。俺も作りたいものがようやく形になりつつあって、気分転換に、俺からクエストに誘ったのだった。
「今日もおなかがすいたのですー。ちょっと我慢ができないかもです。」
「その辺のモンスターを捕まえて生で食べるのはやめてくれよ。絵的に見たくない。」
「今日もリックがおいしいご飯を作って待っているから、我慢してね。」
「…はいなのですー。」
明らかに、マノンの機嫌がよくない。イリスが頭を撫でてなだめているが、早く帰った方がよさそうだ。
今日はリスタントから近い森に素材収集のクエストに来ていた。森の奥にある、貴重な花を採集するクエストだったのだが、これが中々見つからず苦労していた。
遠くの方で、雷鳴がした。これはもっと天気が荒れそうだ。
「天気も荒れそうだ。急いで帰るぞ。」
森の中を、比較的安全なルートで帰ると、かなり時間がかかるので、ちょっと危険だが、茂みの深い箇所を突っ切る形で帰ることにした。
これが間違いだった。
索敵に反応。速い。
「なんかいるぞ!二人とも気をつけ…ッ!」
横腹に、鋭い痛み。見れば、一匹の蛇が噛みついていた。
「くそ!このやろ!」
引き剥がそうとするが、顎の力が強くて剥がれなかった。
「ソーマ!」
イリスが短剣を片手に近寄ってきて、蛇を首もとから切断した。
「すまん、イリ、ス?」
俺は急激なめまいがして、立っていられなくなった。
動悸が、早い。耳の奥から、心臓の鼓動が聞こえるみたいだ。
「ソーマ!ソーマ!大丈夫ですか!」
「あ、…だ、が。」
口がうまく動かず、しゃべれない。
イリスが、横腹にくっついたままの蛇の頭を引きはがしてくれた。
全身の力がぬけて、うまく動けない。
これはヤバいんじゃないか?
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