ロルフとジェム

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 うんうん、と興味深げに目線を落とすロルフに、ジェムも気を良くし、振り返って鉄柵に絡まらせている蔦の話までも始める。意気込む様子こそ見せないが、その饒舌さから思い入れの強さが伝わってくる。  ロルフが興味深く聞いていると、建物のほうから扉を開く音がした。そちらに目を遣ると、スーツを着込んだ男性が現れた。ジェムとロルフの姿を認めると、深々と頭を下げる。  ぴっちりと固めた金髪を見下ろして、ロルフは少し固まったあと慌てて頭を下げた。ジェムはロルフの肩に手を置いて体を起こさせ、 「ロルフ、君は頭を下げなくていいんだよ。僕が招いた客人だろう」 と少し笑った。 「彼は僕付きの執事だ。なにか不便があれば彼に言ってくれ」 「ニコラ・ロベールと申します。何なりと」  顔色一つ変えずに名乗ったニコラに気おされ、ロルフは「は、はい」とただ頷くことしかできなかった。 「ニコラ、彼はロルフという。さきほど森で倒れた私の面倒を見てくれた恩人だ。今夜泊まってもらおうと思うが、食事の支度は間に合うかな」 「ええ、すぐにでも」 「用意してくれ」 かしこまりました、とニコラが建物に消える。それを確認し、ジェムはロルフの背を軽く叩いた。 「すまないね、いきなり仏頂面の男が出てきて驚いただろう。どうか怖がらないでやってくれ。ああ見えて根は悪い人ではないし、あまり腕っぷしも強くないから」  ふふふ、と愉快げにしているジェムを見ていると、少し緊張が薄れてくる。 「ジェムよりよっぽど強そうだけど」 「おや、こう見えて僕も腕には自信があるんだけどな。獣人の君にも負けないよ」 「ええ?嘘だ」  ジェムの頭からつま先までを眺めて首を振るロルフ。ジェムは 「腕の太さだけが強さじゃないだろう」 とおかしそうに言いながら玄関の扉を開け、ロルフを通した。  空間を満たす暖かい空気が、足を踏み入れるロルフの頬を撫でるように包む。部屋の奥の大きな暖炉の熱が、スキレットの蓋をコトコト揺らしていた。
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