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その寝台には、私が刺した、「彼」が横たわっていた。その光景を見た瞬間、心臓が沸騰しそうなほどバクバク鳴る。
そしてその寝台の方へ近づき、そっと燭台の光を当てて…覗き込む。
リーディの顔の血の気が、無い。…私、やはり取り返しのつかないことを…!!!
…燭台を持った手が震える。私は脚の力が抜けてへなへなその場に崩れ落ちた。
「なんて…ことを…」
すると、扉の開く音がした。
「ステラ…?」
メイが、水を張ったたらいと綿布を持って部屋に戻ってきたのだ。
「ダメだよ、あんた。まだ寝てないと…」
「メイ…!!」
私はたまらずにメイに抱き付いた。
「私…私…!!」
泣きながら抱き付いた彼女の身体に触れると、幾重にも包帯が巻かれた感触。
―私の、生ぬるい精神のせいで…。
悔やんでも悔やみきれず、私はそのままメイをそっと抱きしめた。
「落ち着きなって。」
メイはぽんぽんと、軽く私の背中を叩き、言った。
「あんたは無事でよかったよ。」
「ごめん…ごめんね…!!」
謝罪の言葉だけじゃすまされないのに…。
「ああ。私は平気だよ。それよりも…」
メイはテーブルにたらいを置いて、心配げにはす向かいの寝台に目をやる
「峠は越えたって、キャロルはそう言って気力限界まで頑張ってくれたようだけど…」
―まだ目覚めない…。
私は再びはす向かいの寝台の方へ駆け寄る。
キャロルの憔悴しきった寝顔。いつも柔らかく微笑んでいるキャロルが…見た瞬間胸が詰まる。
―こんなにまでなって…。
私はキャロルを優しく抱きしめた。
すると、キャロルが気が付いたようだ。静かに目を開けて、私を見つめる。
「ステラ…?」
「ごめんなさい、キャロル…寝ていて?」
「ステラ…リーディはまだ目覚めない…?」
私は頷いて、再び涙を目にいっぱい溜めて答えた。
「ええ…。」
「私も頑張ったけど…もう気力の底をついたの…。あとは彼の生命力次第だわ…。」
キャロルも少し泣きそうな顔で、微笑んだ。
「……。」
彼の白い顔が、いっそう血の気が引いて白い。
私は、どうすれば…?
泣いてばかりではいられない。
自分は寝ていたせいか、気力はちょっと回復しているのを感じる。もしかしたらリーディの生命を立て直す手助けくらいの気力なら…魔法の苦手な私。でも、覚醒した時のあの感覚。いつもなら記憶が無くなっていたけど、今回は憶えている。
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