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声が聞こえる…。
―頬に赤みが差してきたし…あっ気が付いた!よかった!!-と、ハリのあるこの声は、メイの声か?まだ耳がぐわんぐわん鳴る。そのせいかメイは近くにいるようだが、その声はずいぶん遠くに聞こえる。その横に、随分疲れ切ったキャロルの顔。でも静かに安堵の表情を浮かべてる。ああ‥キャロル。気力相当使い果たして俺を治療してくれたんだなって、すぐに分かったよ。そう思いつつ、まだうつろな目で起き上がろうとしたら「まだ無理だから」と、コウが支えてもう一度俺の身体を横たえさせる。大丈夫だよ、肋痛むけど、温かい光を感じるから…。そうコウに目で訴えてそのまま目線をその先に向けると、あいつが…ステラが手を翳していた。泣きそうな顔で…いや、随分泣き腫らした後だ。こんな時に関係ないけど、初めて出会った時と立場が逆だと思った。
そして俺の目を見て言った。
「生きてて…よかった……ごめんなさい。」と。
ああ。ステラ、記憶戻ったのか…。すごいな、お前。やっぱ勇者だよ。マレフィックスの力だと言われれば、だけど。すごい女だ。
まだ言葉は発せられる力は俺には無くもどかしかったが、俺は返事代わりに微笑んだつもりだ。ステラも気が付いたようで、泣き顔を微笑みに変えてくれた。瞬間、彼女も安堵したのか、俺の寝ている寝台の上に突っ伏すように倒れこんだのだ…。
ステラは、その後丸一日眠ったままだった。
命に別状はなく、ただ、回復をするために身体が彼女を眠りにつかせているような…そんな感じがした。
「とりあえず、皆助かってよかったわよ。」
メイがステラの寝顔を覗いて言った。
「ほんとだよね…」
コウも頷く。
キャロルは別室で同じく休んでいる様だ。
皆無事だとわかって、キャロルも緊張の糸が切れたのと、気力を使い果たしていたので反動で疲れがドッと出たのだ。
「キャロル…本当に頑張ったんだね…。」
「今、リーが逆にキャロルを看ているよ」
「リーも、本当に助かってよかった…。それにしてもあの魔性は何処へ消えちまったんだろうか?」
メイだけがあの闘いの一部始終を見届けていたのに、それだけが分からなかった。
―魔性は…一体何がしたいんだ?
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