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一方リーディは、まだ本調子ではないが、寝台から起き上がれるようにはなり、
キャロルが寝ている傍らで、彼女の容態を看ていた。
―キャロルがここまで身を尽くして治療したとはいえ、俺はそれでも完全に治ってなかった。
ステラ、あの時は本気だったんだな…。あの魔性。ステラを自らの下に引き入れて俺たちを皆殺しにするつもりだったのだが、またもや誤算だったみたいだけど。
少し熱っぽいキャロルの額に、冷やした綿布をそっと置いて、考える。
―なんだか、魔性に俺たちがいつも翻弄されているみたいだ、一見向こうが誤算だったと
逃げているように見えるが…実際のところあいつ、一体何を企んでいるのだろうか?
窓の外を見ると穏やかな山麓の景色である。数日前のあの嵐の夜が嘘みたいだ。
するとキャロルの瞼が少し動いた。
「…ん…」
「キャロル、気が付いたか?」
キャロルはゆっくり起き上がるとリーディに微笑んだ。頬はいつものような薔薇色に戻っている。
「…ここまで身を挺して俺の治療してくれて本当に申し訳ない。」
「大丈夫よ。もうすっかり休んで回復したし、リーディは平気なの?」
「ああ。おかげ様で。死にそーだったけど。」
リーディは水差しの水をグラスに入れてキャロルに差し出す。キャロルはありがとうと言って受け取り、少し口を付けた。
「ステラがね、あの子もボロボロの状態だったけど頑張ってくれたしね…。あ、当のステラは?」
「別室で眠っている。もう身体は大丈夫だけど、ステラ自身が回復しかけの時に俺に気力を与えたせいか、また眠ってしまったらしい。」
リーディは静かな口調で答えた。
―そういえばあいつとは…気まずくなったまま…こんなことになったんだよな。
彼は再び窓の外を眺めて、ステラを想った。
「リーディ?」
キャロルがそんな彼に気が付いて、声を掛ける。
その彼女の呼びかけと同時に、扉が開いた。
「コウ…」
コウが部屋にやってきたのだ。
彼は少し一息ついてこう言った。
「キャロルも目覚めたのならよかった…もう大丈夫かな?こっちもステラが目覚めたようだよ」
ステラはすっかり回復した様子であったが、彼女の精神は不安定だった。何故なら、彼女は記憶を取り戻してから、記憶がない間、自分がやってきたことが許されないようなことばかりだったと憶えていたからである。
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