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彼の手にはステラの部屋から持ち出したフランベルジェが握られていた。
「痛いったら!そんなに強く引っ張らないで!!」
ステラは必死に請うがリーディは訊く耳を持たず。彼はステラの手を引っ張り、ロビーをすり抜けて、外に連れ出した。そして、彼はステラにフランベルジェを突き出した。
「お前はこれを持って、闘っていたんだ。構えてみろ。」
そう言われてステラは恐る恐る、フランベルジェを受け取り、柄を両手で握る。
ぎこちない構え。ステラは手を震わせてこう言った。
「怖い…。」
「軽々と、敵を…魔物をなぎ倒していたはずだ。」
「…。」
ステラは泣きそうな顔でフランベルジェを持ったまま俯いている。
―闘い方まで忘れちまったのか??
リーディは眉を顰めて、ステラを見た。
―でも、身体は憶えているはず…。
そう咄嗟に思い、彼は不意打ちでレイピアを抜いてステラの喉に向かって突いた。
瞬間彼女はフランベルジェでそれを受けた。カキーンと小気味いい音が鳴る。
ステラは勝手に動いた自分の身体にさらに戸惑いを覚えた。
「私…?」
「わかったか?お前は勇者なんだ。」
リーディはレイピアを鞘に戻し、彼女の瞳をしっかり見つめて、彼女の両二の腕を掴んで揺さぶる。
――碧い瞳。
瞬間彼女は何かが脳裏でフラッシュバックしたが、それを追いかけようとすると、
とてつもない頭痛が彼女を襲う。
「…痛ッ…。」
カラン…
フランベルジェが地面に落ちて、彼女は両手で頭を抱えた。流石にこれ以上問い詰めるのはステラに負担がかかると思い、リーディはそっと掴んでいた腕から手を放した。
魔性はどういうつもりなのだろうか…?ステラの記憶を消すなんて。
彼女の記憶は戻らないままなのか…?
リーディは困惑しながら、痛みで蹲(うずくま)るステラを支えた。
その頃、メイの部屋にて。
コウはメイと一緒に並んで話をしていた。
彼はステラが執拗に魔性に襲われているとは聞いていたが、何故今回このようなことになったのか
理解できなかった。また、昨晩何故魔性はひと思いにステラを殺めなかったのだろうか?
それはステラもそうだ。二人の間の躊躇が見え隠れする。
リーディと以前エストリアを発つ前に、
二人で話していた時に彼がチラリと言っていた。
(コウはステラがマレフィック・ミックスだといち早く気が付いたので)
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