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「リーちゃん!!」
メイが負傷した腕を抱えながら叫ぶ。もしかしたら致命症かもしれない…
彼女は顔から血の気が引くのを感じた。
―私が刺した、この金髪の青年は…。
どさり、と彼はステラの足元に倒れる、脇から紅い血が滴り落ちる…。
―嫌…!!
呆然とその姿を見つめ、ステラはまた急に脳裏に何かが過ぎったのを感じた。
そのよぎる映像は幾重にも重なって、彼女の脳裏を走馬灯のごとく駆け抜ける。
こめかみが激しく痛む。サーベルを受け取った男性、ステラ、ごめんね?
姉は血の気が多くて…喧嘩っ早いんだ。…思いのほか強くて、悔しかったんだよ!
黒髪の女性…華麗に踊る舞、母が死んだ…魔性、妖しい微笑み、閃光が放たれて…
それは自分を殺めるため?黄金色の巻き毛のシスター…私を知ってた。優しく笑いかける。
ステラ、生きなきゃだめよ…母さんが言う。わかってる、あたしは勇者、でも魔族?
母さんどうして、生きている時に教えてくれなかったの?あたしの父さんのこと…
まー、お前の強さは俺が分かっているから、金髪の碧い瞳の青年、大きな手
口調とはうらはらに優しく私に触れる…
「…リーディ??」
カシャンと何かが填まって、頭がはっきりした。
その瞬間何が起きたのか…いや今まで何を自分がしてきたのかもはっきり
思い出されたのだ。
「嫌ッーーー!!!!!!」
ステラは叫び、魔性の方を振り返り、正気で睨んだ。
瞳の色は能力が覚醒した時と同じ深い紫色。
そう、能力はそのままで身体中からエネルギーを溢れ出したまま…。
激しく彼女に降り注ぐ雨粒が、彼女から発せられる熱に当たると即座に蒸発をする。
その彼女の叫び声で、キャロルが、コウが気が付く。
メイは傷を負いながらも一部始終を呆然と見届けていた。
リーディが、ステラに刺されて?それでステラは…皮肉にもすべてを憶い出せたの?
魔性は戸惑った。何故なら彼女の記憶が戻ったからだ。
こんなはずじゃないと、彼は信じ難く、ステラを見つめたのだ。
「…記憶は消したはずだ…。なのに何故…??」
「私、どっかで変な期待をしていた。」
ステラは血が付いたフランベルジェを力いっぱい握りしめた。
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