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「あんたが私を殺す機会は何度もあったのに、いくら私の能力が覚醒したからと言え、私に止めを刺せなかったのは、私に情をかけていたからで、そして私もそうだった。
私、見たことのない父を、あんたの中に見てた…。私の父さんだと思い込みたくなった時もあったわ。」
そして、瞳にいっぱい涙を溢れさせながら、言い続けた。
「でも、違うのよ、当たり前だけどあんたは私の父ではない。いくら血が繋がっていようとも、
あんたと私は敵同士。どちらがやられるか、それだけしかないんだ!」
魔性はただ、戸惑いの表情を隠せぬまま、ステラを見つめ続けた。
「だからもう、迷わない!私があんたの息の根を止めてやる!!」
瞬間に彼女は魔性に向かって斬り付けた。
魔性の肩がステラに切り裂かれて、青い血が噴き出す。しかし魔性は静かに笑ったまま…
―この私を…倒すと?私のモノになったと思ったら、とんだ間違いであったな…。
魔性はステラの言うとおり、自分自身もステラに特別な気持ちを抱いていたことは否めなかった。
―したらば…私は…そなたを殺めねばならないな…。
魔性は静かに両手を掲げて、爪の先から巨大なエネルギーの塊を増幅させて、ステラに放った。ステラもすぐ様負けじと、両手から同じようにエネルギーの塊を出すとリスナーのそれを受け止めた。
ぶつかる二つのエネルギーは衝突した瞬間に、大爆発を起こした…。
――沈黙…。
ステラは爆風の衝撃で倒れたが、魔性の姿は見えなかった…。
先ほどのエネルギーの衝突で…地面の草木が燃えて、
それが雨に濡れて燻った独特な匂いがする。
魔性を倒したのだろうか?メイは茫然と見守りながらそう思った。
キャロルはすぐさま倒れているリーディの傷の様子を診ている。
そして懸命に治療を開始した。いつも癒しの呪文を唱えるときに、
静かに穏やかな聖なる光を湛えているキャロルが…とても険しい顔で、
リーディにできる限りの光を与えているのがわかる…。
「キャロル…」
メイは静かに近寄ってキャロルに声を掛けるが、キャロルはリーディを治療しながら答えた。
「メイ、あなたも傷を負っているのに…ごめんなさい…私でも今精一杯。ステラの方を診てくれない?」
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