自習室

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中学生までのルールは慣れ親しんだものであり、ひどく当たり前のこととして受け止めてきた。だからこそ高校生になってから驚いた。つまり、「驚く」とは、今までの水準から大きく変化した事態を経験したときに感じることであって、「程度の大小」ではなく「程度の差の大小」に依存するのだ。一年という時間の流れは高校生になってから、段違いに早く感じるようになった。それだけ生活が充実しているということだろうか。 気づけば、高校生としての三年間の半分が過ぎようとしていた。 1.0.お経 僕が通う高校は最寄りの駅から徒歩十分くらいのところにある。県内では一番の進学校だ。二年生も残り半分となった今、何か変わったことがあったかというと特にない。クラスに少し気になる女の子がいるくらい。僕は今日も悠々と日常を過ごす予定だ。白波さんが今日も今日とて僕の前の席にいるから、きっと今日も平和なのだ。率直に言って、僕は彼女が好きなのだ。 2時間目の授業は僕の得意な数学だった。皆が静かに問題を解いている時、前の席の白波さんの肩が小さく震え出した。何かを堪えているような、そういう揺れだ。そして堪えきれず次第に揺れは大きくなる。突然、彼女は何かお経のようなことを唱え始めた。 「二年生は三年0学期。二年生は三年0学期。二年生は三年0学期。」 教室が静まりかえる。それから次第にざわめき出し、「何言ってんだよ白波」などの声も飛び交った。先生も彼女に私語を止めるよう注意した。しかし彼女は止まらない。 「私もやめたいんです。もう疲れました。でも、やめられないんです!誰か止めてください!」     
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