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「そういえば、通り雨のことを英語で『シャワー』って言うんだって! 知ってた!?」  真央が、僕たちに向かってそう言った。  秋の夕暮れが、並んで歩く三人の影を長く伸ばしていた。 「へえ。知らなかった」僕はなんとなく相づちを打つ。 「どうせまた、木野っちの受け売りだろ?」    そう言って、真央を挟んだ向こう側を歩く祐吾が笑った。  彼の笑顔の端から、八重歯がちらりと見えていた。 「どうせ、って何よ! まあ、確かに木野先生が言ってたことではあるんだけど」  歩くたびに、真央のショートヘアーの毛先が揺れる。それなのに切りそろえた前髪は微動だにしていなくて、それが少し可笑しかった。 「やっぱり受け売りかよ」と祐吾が笑う。  木野先生は、真央が所属しているクラスの英語の授業を担当している女性教師だった。  僕は彼女の授業を受けたことはなかったが、ときどきジョークを言ったり豆知識を教えてくれたりする良い先生だということは、真央や他の友達から噂に聞いていた。  そして、木野先生の名前が出たことで、僕はあることを思い出し、それを二人に話すことにした。 「そういえば、木野先生、結婚するらしいな」 「えっ、まじ!?」     
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