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さすがにカラオケボックスで練習はまずいから、プロデューサーを感じて、あの高級BARのスタジオを借りて練習する事にした。
BARでランチにパスタを食べて、練習開始。
やはり、出だしが遅れたり音外しをしてしまう。
1人で自分のパートを歌うだけなら問題なく歌えるのに、怜斗と合わせると、やらかしてしまう。
たぶん、精神的な問題。
「彩花、俺を意識せずに歌え。どうしたら俺を意識せずにいられる?」
3時間歌い続け、1度もまとめに歌え切ってないわたしに、怜斗は言った。
わたしがその方法を知りたい。
怜斗以外の人となら、絶対に完璧に歌えるよ。でも、怜斗とのコラボ曲だから、怜斗と歌うしか無い。
怜斗を、怜斗だと思わないようにして歌うと歌いきることはできても、感情が入って無いと怒られる。
「彩花、提案がある。ファン音楽祭が終わるまでの間だけ、昔の恋人同士に戻らないか。そしたら、彩花は絶対音感と、天性の感性からの表現力があるから、本来の力を発揮させて、最高の演出ができると思う」
怜斗がわたしに近づき、わたしを抱きしめた。
戸惑うわたしだけど、懐かしい、怜斗の匂いと温かさに包まれ、ほっとする。
「このまま、歌ってみて」
怜斗がリモコンで曲を流す。
怜斗の胸の中から離された。
でも、わたしの隣にいて、手を握ってくれてる怜斗。
不思議な事に、完璧に歌い切っただけでなく、最高の歌唱力で歌えていた気がした。
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