69人が本棚に入れています
本棚に追加
/108ページ
「そうか。何となく合点がいきました。俺は仕事が残っているので、片付けてきます。それから連絡しますので、兄さん、待っていてください」
どこで待っているというのだろうか。俺が返事をしようとすると、新悟が振り返った。
「黒羽さんの家を教えてください。地図を送っておいてくださいね!絶対ですよ!」
俺が返事をする前に、新悟は走るように行ってしまった。
「新悟の記憶が戻ってしまったような……」
「ああ、やってしまった。市来、願ってはダメでしょう」
久住は、こうなると分かっていたから、手を貸してくれなかったのだろう。
「でも、ま。こちらのお兄さん達の成仏が先かな……」
再び餃子を食べ始めると、久住が見てしまった真実を教えてくれた。
「まず、最初に言っておくのは、君達はもう死んでいるという事だよね」
「それは、分かっています」
夏輝が真面目に答えていた。一平と亮平は、カウンター席でデザートを食べていて、やや傍観している。でも、夏輝には知りたい事があるらしく、真剣に久住の話を聞いていた。
「旅行に出発した日、夏輝君は真理子さんと一緒だった。実家の横で真理子さんと待ち合わせをして、車に乗り込んだ」
夏輝は、頭を振って自分の記憶を確認していた。
最初のコメントを投稿しよう!