第六章 君を探すよ 三

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 何故、夏輝が真理子と待ち合わせをしていたのかと言うと、話したい事があったせいだ。夏輝は正直に、彼女と別れる予定で、自分と彼女が結婚して家庭を作る事が想像できなかったからだと告げた。  すると真理子は、自分とならば想像できるかと聞いてきた。夏輝は即答で、それは今の地続きの未来のようで、当たり前に想像できたと言った。  真理子は今回の旅行で、一平と話し合い、別れると決めた。そして、夏輝と付き合う事にした。 「ごめん、一平」 「それは、分かっていた事だからいいよ」  一平は気にする風でもなく、少し笑顔になっていた。 「今だから言うけど、俺が好きなのは夏輝で、真理子とは夏輝の話しが出来る親友みたいなものだった」  ここで疑問になるのは、どうして夏輝の記憶が誤ってしまったのかだろう。 「夏輝君は、次に亮平君を乗せた。すると土砂降りになり前が見えない程だった。危険なので走行を止めて、公園の駐車場で時間を潰した。その時に亮平君が持ってきたコーヒーを飲んで、夏輝君と真理子さんは眠った」 「亮平、どういうこと?」   亮平は表情を無くして、宙を見ていた。 「一平と話したい事があったけど、夏輝と真理子には聞かせたくなかった。小雨になると、二人を後ろに移動して一平を迎えに行った」  亮平は一平を乗せると、花家の借金のせいで、真理子の両親が夏輝との交際を反対するだろうから、どうにかしたいと伝えた。一平も、それは気にしていたが。どうする事もできなかった。  そこで、亮平は一平に告白した。 「亮平君は、一平君になりすまして、一平君の同僚と結婚の約束をした。そして、結婚資金を用意して貰い、その金を花家の借金の返済に使った」 「何で、俺の同僚なの?」  それは外出先での偶然があり、その彼女が亮平と一平を間違えて声を掛けてきたのだ。 「盛大な結婚式をしたいと金を貯めていて、式場の前金が必要だと言うと、全額支払うと持ってきた」  でも、預かった金を、亮平は花家の借金の返済に使用してしまった。結婚式場も予約などしていないし、結婚する気もなかった。  咲楽は恋人である亮平に、一平が浮気しているのではないのかと相談された。 「俺は追い詰められていった……」
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