第六章 君を探すよ 三

12/13
69人が本棚に入れています
本棚に追加
/108ページ
「亮平、咲楽をどうしたの?」 「どうも出来なかったよ。俺も夏輝が好きで、だから咲楽と付き合った……咲楽はそれにも気付いていた」  亮平は次に咲楽も車に乗せて、走り出した。亮平は、全ての真実を旅行中に打ち明けようとしていた。しかし、雨が再び酷くなり、前方が見え難くなった。そこに高校生らしき人が横断してきて、止まっていると横から衝撃がきた。車は衝撃のままに飛ばされ、崖を落ちて海に入った。車は大破して、荒れた海に散った。 「……俺は、事故など嘘で、全部嘘で、何も無い旅行をしているのだと思いたかった……ちょっと間が悪くて、渋滞と雨で困ったなと言っているのだと想像した……」  亮平が最後に思った事が、眠っていた夏輝の記憶に刷り込まれてしまったらしい。 「亮平……」 「夏輝も一平も、真理子も咲楽も死んで、誰もいないなんて、信じられないでしょう。どうして、俺だけ助かったのだろう」  もしかして、亮平は生きている人であったのか。 「亮平さんは生きているの?」  俺がじっと亮平を見ると、久住が微妙に首を傾げていた。 「亮平君は、瀕死の重体で、事故から目が覚めていないね?死保は、生死が分からない状態でも行くからね」
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!