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痛くてぐ、っと呻いたら、優しく頭を撫でられる。
嗚咽を漏らすのにだって口の中から背中まで激痛が走る。
「見てろ」
目の前が涙で見えなかった。
でもなんとか見えた。
後ろ姿のユキが見たこともないくらい洗練された最低限の動きと、全身の体重と圧が最も乗るフォームで、俺を痛めつけた男を、思い切り殴りつけたところ。
すごい音がなった気がした。
胸にあった屈辱感と怒りともどかしさ、その他諸々のあいつにやられたこと全てにおけるもやもやしてぎとぎとした苦痛に関する思い全部がすうっと晴れていく。
途端にぶわっと視界が白けて、俺は壁を伝ってずり落ちるように床に転がった。
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