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ユキが自然な手つきで俺の手を取る。
「ノエル……できたよ。……泣いてる?」
「……泣いてないよ」
「そう?」
「残念! 嘘です!」
「嘘かよ」
片手で湿っぽい目を擦ってユキの手を握り返す。
「食後のデザートの分腹空けといてよ、ユキ。甘いのが嫌いでも食え」
「デザートって別腹なんじゃないの?」
「俺はそうだけどユキには十中八九無いから空けておいたほうがいいよ」
分かったとユキが言う。真面目かよ。
ユキに手を引っ張られながら馳せた。
……これからのこと。
にぎやかな食事になりそう。
賑やかで睦まじくて心地良い。そしてそんな日々がずっとずっと続きますように。
祈ろう。
導かれるままにユキの隣に座った。反対側の隣には兄さん。向かい側に騎一と郁とカケル。
みんな笑顔だった。
色が溢れる。
今まで見たどんな色よりも俺を幸せな気持ちにしてくれた。
料理が冷めてしまわないうちにと手を合わせる。
いただきますを言うために大きく息を吸い込んだ。
完
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