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幸せもあるけど心がむず痒くて胸焼けしてる。ちょっと自己嫌悪もある。あんまりこういうことしたことないから。超えちゃ行けない一線を越えちゃった気がした。なんとなく、やっちゃったって後悔も少し。
けだるくてぼーっとしてたら、顔を上げたユキと目が合った。
顔がかあっと熱くなる。
なにか言おうと思って口をほんの少し開けたんだけど、なにも言葉が出てこなくて、ふい、と俯いてしまった。
ユキがくす、と笑って俺の首筋に顔を擦り付けてくる。
触れ合ったユキの肌はしっとりしていてすごく色っぽかった。
「好きだよ」
そのたった一言が俺を立ち直らせてくれる。自己嫌悪も後悔もどこかに吹っ飛んでいった。海に揺れる海月みたいな俺の心をしっかり繋ぎ止めてくれる。
よかった。
「……俺も……」
掠れた声で弱々しく言ったらユキがふ、と声を出して笑う。
「なんだよ」
「しおらしい」
「……いつも通りだろ」
「全然違う」
「そうかな……」
うん、とユキが言った。自覚がない。
俺は少し考えて、ユキの頭に手を乗せる。
「ユキは……こういう俺は、いや?」
とんでもない、とユキががば、と顔を上げて額を合わせる。
「どんなノエルも全部好き」
彼の目の中が、光が溢れるアクアリウムみたいに輝いている。
綺麗でつい見とれてしまった。
こんな瞳を彼が始めからしていたら、俺はきっと彼に興味なんて持たなかったかもしれない。どこかで彼を見かけても綺麗な人、ってそれだけ感じただろう。
俺が見つけた世界で一番綺麗で愛しいアクアリウム。
とくん、と跳ねた心が水の中に落ちていく。
ユキが俺を好きになってくれて、ただ嬉しい。
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