act.27

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 幸せもあるけど心がむず痒くて胸焼けしてる。ちょっと自己嫌悪もある。あんまりこういうことしたことないから。超えちゃ行けない一線を越えちゃった気がした。なんとなく、やっちゃったって後悔も少し。  けだるくてぼーっとしてたら、顔を上げたユキと目が合った。  顔がかあっと熱くなる。  なにか言おうと思って口をほんの少し開けたんだけど、なにも言葉が出てこなくて、ふい、と俯いてしまった。  ユキがくす、と笑って俺の首筋に顔を擦り付けてくる。  触れ合ったユキの肌はしっとりしていてすごく色っぽかった。 「好きだよ」  そのたった一言が俺を立ち直らせてくれる。自己嫌悪も後悔もどこかに吹っ飛んでいった。海に揺れる海月みたいな俺の心をしっかり繋ぎ止めてくれる。  よかった。 「……俺も……」  掠れた声で弱々しく言ったらユキがふ、と声を出して笑う。 「なんだよ」 「しおらしい」 「……いつも通りだろ」 「全然違う」 「そうかな……」  うん、とユキが言った。自覚がない。  俺は少し考えて、ユキの頭に手を乗せる。 「ユキは……こういう俺は、いや?」  とんでもない、とユキががば、と顔を上げて額を合わせる。 「どんなノエルも全部好き」  彼の目の中が、光が溢れるアクアリウムみたいに輝いている。  綺麗でつい見とれてしまった。  こんな瞳を彼が始めからしていたら、俺はきっと彼に興味なんて持たなかったかもしれない。どこかで彼を見かけても綺麗な人、ってそれだけ感じただろう。  俺が見つけた世界で一番綺麗で愛しいアクアリウム。  とくん、と跳ねた心が水の中に落ちていく。  ユキが俺を好きになってくれて、ただ嬉しい。  
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