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出ていこうとした牡が、再び奥まで突き入れられた。そのまま押し付けるように圧迫を受ける。汗ばんだ身体がぴたりと密着していた。
「アンタ、やばいな……頭、変になる……」
之成が僅かに身をよじる。接合部から溢れた淫液が足を伝った。男は名残惜しむかのようにゆっくりとその身を抜いていく。
ぞくりぞくりと背筋を痺れが駆け巡る。
「なぁ、もう一回」
男が去った菊花を指で広げ、そう誘った。生暖かい液体が臀部の下へと水たまりを作っている。
貪欲な誘いに、之成が苦笑した。障子からは光が差し込んでいる。
「雨もやみましたので」
そう断るや、早くも身支度を整えていく。情事の痕跡をすっかり消し去った背中に、腕をまわした。胸もとにそっと手を入れ、その双腕を撫でる。
「なぁ、また……な」
わざとゆっくり、区切るようにその耳へと囁きかけた。一度きりなど惜しいと甘く――。
答えることなく静かに之成が帰っていった。残された俺は、乱れた下帯姿のまま大の字に寝転がった。全身が心地よい疲労に包まれている。
背中から手を天井にかざす。その手には三つに巻き止められた財布。その重みににやりと笑った。
良質な獲物に出会えた喜び。情事の最中に転がり落ちたかんざしを拾う。大きな紅玉に梅の花。それは売ってしまうには少し惜しく感じた。
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