はきだめに色盗り…後編

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 落ち着いた声が耳を掠める。首筋を舌が這う。そうなれば、なし崩しに絡まり合うのがおきまりだ。  情事を重ねるうち、性急に睦みあった初めてから、少しずつ互いを愛撫し、慈しむように寄り添う。しかし、それは生娘にするような優しさではない。力ずくに組み敷きながらも、決して傷つけない、ひたすらに快感だけを与えるような、そんな情交だった。  こんな風に俺を抱くやつなんかこれまでいなかった。もちろん、俺だってそんなもの望んじゃいなかった。ただ自分の中を深く抉って熱くしてほしいだけだったのだ。それなのに、その丁寧な指先が心地よくて仕方がない。  戦利品をいただくことも忘れなかった。  二度目には七宝を散りばめた根付(ねつけ)を、三度目には金箔に彩られた印籠を。それは明らかに代々伝わる宝物といった品だった。  俺のなかで焦燥が募っていく。  気づかぬ筈はないのだ。逢瀬を重ねるたびに値打ちものを頂戴していたのだから。  それなのに、まるでこちらを試すかのように之成の懐には贅を尽くした小間物が忍ばされている。  潮時だった。これ以上は自らの身を滅ぼす結果にほかならない。それでも、自分を覆う大きな身体を、その熱を、熱く囁く息遣いを、優しく髪を撫でる手を……俺は諦めることができずにいた。     
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