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はきだめに色盗り…後編
柳の下に之成が立っている。視線が合えば、当然のように連れ立って歩く。
逢引きはいつも昼日中、之成は固く整えられた背広を身に着けている。地位の高い男であろうに、嫁などいないというのはきっと嘘だろう。
「アンタ、いくつなんだい?」
「私ですか? 四十六ですよ」
「見えねぇな」
「それは褒めてくださっているのでしょうか?」
「服を着ていると歳相応だ。けど脱いだ後は……」
思い出してつい笑った。
「もちろん褒めているさ。正直、色ぼけ親父では勃つものもそれなりだろうと馬鹿にしてたからな」
草臥れたせんべい布団のうえ、素っ裸に抱き合っての閨事は、色気があるとは言い難い。
「男遊びなんざどこで覚えたんだい?」
「この歳ですから、それなりに…」
それ以上、之成は答えなかった。答えられないことを詮索するつもりもないから、とりあえず釘だけを刺した。
「俺に火遊びのツケは払えねぇぜ?」
誰かが乗り込んできたとしても見捨てるからな。そう念押しして、少し冷め始めた肌に身を寄せた。
「そのようなヘマはしませんよ」
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