【4】

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麻美は時計を見ながら、英治が来るのを待っていた。 しかし他のフリーのお客が来て、この日から英治は来ることがなかった。 アパートに到着して、麻美は英治のマグカップを見つめながら「どうしたんだろう…何かあったのかな?」と思い、心配になった。 ふとあの日貰った名刺を思い出し、麻美はアパートを飛び出て公衆電話から英治の事務所に電話をしてみた。 するとガラガラ声の男性が出て、麻美はドキドキしながら英治のことを聞くと「アニキなら、今出掛けていないよ」と言われ、麻美は「わかりました…」と言い電話を切って、アパートへと帰っていった。 麻美は不安感に襲われ、眠りに着くことが出来なかった。 月明かりの中、名刺を見ると裏に事務所とは違う番号が書かれていたのを見つけ、またしても慌ててアパートを飛び出て公衆電話でその番号に電話をした。 呼出音が鳴り、中々出ないから麻美は電話を切ろうとすると「もしもーし?」と言う、英治の声が聞こえた。 麻美は慌てて「もっ…もしもし?麻美です…」と言うと「おー!お久♪ゴメンな?ちぃっと野暮用が立て続けに起こったから、中々顔出し出来なかっただけだよ♪」といつもの飄々とした英治の声を聞いて安心し、緊張の糸が切れて麻美は涙がこみ上げてきて泣いていると「…今から、そっち行くわ。待ってろ」と英治は言い、電話を切った。 麻美も電話を切ってテレホンカードを取ると、急いでアパートへと帰っていった。
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