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「痛いから、離してくださいっ!」と言うと「うるせぇんだよ!」と言い、思いきりビンタをされた。 その拍子によろめくと、その場に倒れた。 麻美はあまりの痛さに泣きそうになっていると「おい、お前。大事な商品に、傷を付けるンじゃねぇぞ?」と言う声が頭上から聞こえた。 「あっ…!すみません!!」と言い、先程の男が慌てて謝罪をした。 麻美はその声にドキドキしながら上を見上げると、組長の薗部甚八(そのべじんぱち)と目が合ってニッコリと微笑みながら「こりゃあ、いい女だ…」と言い、顔を近付けた。 髪の毛を触りながら「きっちり両親の落とし前は、払ってもらわねぇとなぁ…?」と言うと、麻美を見つめた。 「えっ…?どういうことですか?」と言うと「お前さんは、借金を抱えた両親に売り飛ばされたんだよ?」と言い、立ち上がると借用書を手にした。 麻美は「そっ…そんなこと、知りませんっ!!」と言うと、「お前のサインと拇印が押してあるんだよっ!」と先程の穏やかな顔と声が一気に変わると、麻美の目の前に借用書を突き付けた。 そこには『私、川村麻美は両親の抱えた借金580万円を両親の代わりに風俗で働いて支払います。昭和62年4月9日 -川村麻美-』と書かれていて、親指の拇印がハッキリと押されていた。
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