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と、結衣は仰々しく顔の前で手を合わせる。
「もう、今回で最後だよ」
「わかってますって。でも、助かったわ。黒魔法学のチャビの奴はねちっこいからさ」
チャビというのは、黒魔法学の先生のあだ名だ。毛髪が薄いので、“ハゲ茶瓶”から“チャビ”と呼ばれている。
「でも、結衣って、大学は魔法学部希望なんでしょ? ちゃんと勉強しないと受からないよ?」
「うん、来るべきときが来たら、ちゃんと勉強するから」
結衣はそう言うと、スキップしながら私を追い越し、先に行ってしまった。そんな結衣の後ろ姿を見ながら、私はもう一度、溜息を吐いた。
私達の世界には日常に魔法が溢れている。火を起こすのも魔法、水を汲むのも魔法。義務教育の小学校と中学校で基礎魔法学を必須で学ぶ。普通に生活を送る分にはそれで十分だ。高校からは少し高度な黒魔法と白魔法を学び、更に魔法を使った専門職を目指す者は大学の魔法学部に進学する。
私は最高学府、東都大学の魔法学部を目指している。白魔法学科の回復系魔法専攻に進み、将来は医師になるのが目標だ。結衣は隣県にある縦浜国立大学の魔法学部を目指しているようだが、今の成績ではとても合格できそうにない。
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