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私は学校に着くと、結衣に黒魔法学のノートを渡した。黒魔法学の授業は一時間目だから、結衣は猛烈な勢いで写し始める。ホームルームの間も、担任の話そっちのけで写す。ようやく、一時間目開始の五分前の予鈴が鳴ったところで写し終わり、ノートを返してくれた。
「ギリギリセーフ!! ありがとね、穂香。次もよろしくね」
「次もよろしくって……今回で最後って言ったじゃん」
「あはは、冗談冗談。さあ、静かにしてないと、チャビがやって来るわよ」
結衣は笑いながら言うと、軽い足取りで自分の席に戻って行った。
一時間目が始まると、さっそく宿題が集められた。結衣は教卓まで宿題を提出に行った帰りに、私の方に向かってピースサインをして見せる。私は呆れて溜息を吐いた。
宿題を集め終えたチャビ先生は、
「えー、それではー、授業をー、始めるー」
と、語尾を必要以上に伸ばす独特な口調で授業開始を宣言した。
「えー、前回はー、炎系魔法のー、エネルギー調節とー、遠隔操作についてー、学んだー。それではー、これからー、実技をー、やってもらうー。宿題をー、ちゃんとー、理解してればー、できるはずー」
教室の中はチャビ先生の言葉にざわつく。指名されたくないクラスメイトは、決してチャビ先生と視線を合わせない。
「それではー、榊原穂香ー。エネルギー調節をー、やってみろー」
「はい」
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