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私は返事をして立ち上がる。それから印を結び、掌の上にソフトボール大の炎の玉を作り出す。後は授業でやったとおり、エネルギーを調節して、炎の玉をバスケットボール大まで大きくし、続いて蝋燭の炎程度まで小さくしてから、元の大きさに戻した。
「榊原ー、完璧だー。座ってよしー」
私はチャビ先生に一礼してから腰を下ろした。教室中から拍手が起きる。私は思わず恥ずかしくなって俯いた。だけど、チャビ先生はそんな私のことや、教室の雰囲気を完全に無視して、次の指名に入る。
「次はー、牧野結衣ー。遠隔操作をー、やってもらうー」
チャビ先生はそう言うと、教卓の上に蝋燭を立てた。何人かのクラスメイトがホッと胸を撫で下ろす中、結衣は半ばチャビ先生を睨むようにして立ち上がる。
「それではー、牧野結衣ー。この蝋燭にー、火をー、つけてみろー」
「はーい」
結衣は完全に不貞腐れた様子で返事し、印を結び始める。その手付きは辿々しい。今どき小学生だってもう少しスムーズに印を結ぶというのに。
印を結び終えた結衣は、態とらしく、
「ハッ!!」
と大声を上げて、両手を前に突き出す。教室内に静けさが広がる。蝋燭には……火はついていない。
「どうしたー、牧野結衣ー。火がー、ついてないぞー」
チャビ先生が結衣を睨みつける。結衣はバツが悪そうに、右手で後頭部の辺りをポリポリと掻く。
その時だった。
「ギャアァァァ!!」
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