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史貴が目を開けると、薄暗い部屋の中だった。
見慣れた天井と、そこにぶら下がる室内灯の丸い蛍光灯。
占めたカーテンの隙間から白い光が漏れていた。
どうやら朝が来たらしい。
「夢か……」
わざわざ呟いて、布団の上に身を起こす。
「今のは……」
枕元のスマートフォンを手に取り、日付を確認する。
「ああそうか……だから……」
だからあんな夢を見たのだ。
初めて彼女の親にあった日。
待ち合わせの場所まで車で行ことしたら渋滞に巻き込まれた。
結果的にギリギリの時間に待ち合わせのファミリーレストランに到着した。
着慣れないスーツ姿で運転していたせいか、彼女の両親に会う前にへとへとだった。
「程よく力が抜けて良いんじゃない?」
ぽんぽんと史貴の肩を軽く叩きながら梨恵は気軽な調子でそう言った。
「気楽に言うなぁ」
「気楽よ。だって、自分の親だもの」
「遅刻して、俺が嫌われる可能性とか考えないの?」
「無いわよ。私が選んだんだから」
そう言って、梨恵は史貴の頬にちゅと可愛らしいキスをして笑った。
「自信もって」
「……はい」
もう、随分昔の事だ。
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