episode250 愛と愛

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次に目覚めた時には夜が明けていた。 うっすらと――ひっそりと。 藍色の空が白んでゆく淋しい時間だ。 眠ってしまって身体が冷えた。 僕は肩から羽織った上着をかき寄せて 「え……」 それでふと気づくんだ。 僕の上着じゃないこと――。 微かに香るローズオイル。 まだ夢の続きかと思う。 だけど顔を上げるとそこに 「涙の痕だね。悲しい夢だった?」 本当にいたんだ。 「九条……さん……?」 僕の頬に触れ 優しく涙を拭ってくれる手。 「上着は着てなさい。ひどく冷えてる」 本物だ。 夢じゃないよ。 あんなことがあった後なのに 一糸乱れぬ姿で僕の目の前で九条敬は微笑んでいる。
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