episode250 愛と愛

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「助けたじゃないか。だからほら――」 悪びれもせずサイレンの音に耳を澄ます。 王様の顔は冷たく微笑んでいて 僕はその手に思い切り爪を立ててやる。 「九条さんがルカを突き落とすのを待ってたんだろ……?」 征司は答えない。 だけど僕の手を放そうとしなかった。 「答えろよ……!答えろよ征司……!」 僕の爪が己の手に食い込むのを見つめながら 柵越し――僕の唇すれすれまで近づいて 「俺がなんて答えたら満足だ?」 ようやく征司は口を開いた。 「俺がおまえの尻拭いをしてやればこうはならなかったと?」 沈痛な面持ちは 見る間にジョーカーのような笑みの下に消える。 「こんなことにも、あんなことにもならなかったのか?」 地面にうずくまり泣き続ける薫と 青ざめた九条さんを交互に眺め 「おまえこそ答えろ、和樹」 頭を振った。
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