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「助けたじゃないか。だからほら――」
悪びれもせずサイレンの音に耳を澄ます。
王様の顔は冷たく微笑んでいて
僕はその手に思い切り爪を立ててやる。
「九条さんがルカを突き落とすのを待ってたんだろ……?」
征司は答えない。
だけど僕の手を放そうとしなかった。
「答えろよ……!答えろよ征司……!」
僕の爪が己の手に食い込むのを見つめながら
柵越し――僕の唇すれすれまで近づいて
「俺がなんて答えたら満足だ?」
ようやく征司は口を開いた。
「俺がおまえの尻拭いをしてやればこうはならなかったと?」
沈痛な面持ちは
見る間にジョーカーのような笑みの下に消える。
「こんなことにも、あんなことにもならなかったのか?」
地面にうずくまり泣き続ける薫と
青ざめた九条さんを交互に眺め
「おまえこそ答えろ、和樹」
頭を振った。
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