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その時だった——。
窓の外に響く聞き慣れたエンジン音。
まるで僕の真横につけられたように止まる
真っ白なポルシェ。
僕はたまらず身を起こし窓の外を覗いた。
「九条さん……」
白いポルシェから降り立った彼の腕には
抱えきれないほど大きな黄色いバラの花束が——。
行かなければ。
あれは僕のだ。
あれは僕のモノ。
窓に向かって伸ばした指先が虚しく宙をかく。
「愛してる、和樹——」
「アッ……ンンッ……!」
僕の身体は後ろから征司に絡めとられ
その瞬間強引にひとつになった。
「この俺が誰よりもおまえを愛してる」
僕の為の薔薇を抱えて
九条さんの姿は向かいのヴィラの中へと消えてゆく。
僕のいない部屋の中へ——。
「……恨みます……僕はあなたを……誰よりも恨みます」
声に出してシーツに爪を立てる。
でも——。
僕は肩越しに征司を振り返り
交わりと同じだけ深い口づけを求めていた。
もっと愛してくれと言わんばかりに——。
【おま首10・完】
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