episode250 愛と愛

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その時だった——。 窓の外に響く聞き慣れたエンジン音。 まるで僕の真横につけられたように止まる 真っ白なポルシェ。 僕はたまらず身を起こし窓の外を覗いた。 「九条さん……」 白いポルシェから降り立った彼の腕には 抱えきれないほど大きな黄色いバラの花束が——。 行かなければ。 あれは僕のだ。 あれは僕のモノ。 窓に向かって伸ばした指先が虚しく宙をかく。 「愛してる、和樹——」 「アッ……ンンッ……!」 僕の身体は後ろから征司に絡めとられ その瞬間強引にひとつになった。 「この俺が誰よりもおまえを愛してる」 僕の為の薔薇を抱えて 九条さんの姿は向かいのヴィラの中へと消えてゆく。 僕のいない部屋の中へ——。 「……恨みます……僕はあなたを……誰よりも恨みます」 声に出してシーツに爪を立てる。 でも——。 僕は肩越しに征司を振り返り 交わりと同じだけ深い口づけを求めていた。 もっと愛してくれと言わんばかりに——。 【おま首10・完】
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