episode250 愛と愛

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だから嫌味でもなく 本当に憐れむように征司は言うんだ。 「だからあんたには悪いが、当分の間出て来れないと思ってくれ――」 そこで気づいた。 「征司お兄様……?」 これが最終的な罠なら――。 征司は持ちうる全ての権力を駆使して 九条さんを牢屋に閉じ込めるつもりだ。 物理的に僕から引き離し かつ社会的制裁を加える。 おまけに彼はあの性格だ。 たとえ僕を助ける為だったとはいえ 自分がルカを屋上から突き落としたと――。 証言を曲げることはないだろう。 「ダメっ……!九条さん行っちゃダメ……!」 僕が柵をよじ登ろうとした時。 彼は振り返りもせず行ってしまった。 「九条さんっ……!!」 慌ててバランスを崩した 落下寸前の僕は――。 皮肉にも征司の腕の中へ堕ちてゆく。
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