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「やめて……征司お兄様……嘘だと言って……」
何度この腕の中でもがいただろう。
溺れかけ呼吸もままならず
それでも抜け出せず。
「家へ帰ろう、和樹」
だけど――。
「いやだっ……!」
僕は初めて心から叫んだ。
「お兄様……これ以上問題を起こしたら僕を家から追放すると言ったよね?」
「何が言いたい?」
「どうぞ。あそこでうずくまってるあなたの弟だけ連れて屋敷に帰って」
虚ろな瞳でルカを吸い込んだ闇を睨んでいる
薫を見やり僕は征司の手を跳ね除けた。
「今日からあなたの弟は薫だけだ――」
そして初めて心から拒んだ。
「和樹」
「追放?結構。僕だってもうあなたのいる家になんか帰らない」
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