episode250 愛と愛

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「馬鹿言え、他に行くところなんてないだろ」 悪気なんて一つもないみたい征司は言う。 「なきゃ作るさ。それでどんな手を使っても――僕が九条さんを解放する」 途方に暮れているのはこっちなのに。 僕が何か言うたび 征司は取り残された子供みたいな顔をする。 「やめておけ。何があったにしろ人を殺した男だ」 「違うね。僕が愛した人だ」 九条さんの言った通り。 僕を傷つけることで僕以上に傷ついている そんな征司の姿を見るのは正直悪くなかった。 「それに――誰より僕を愛してくれた人だ」 だから そんなことないと十分分かっているのに。 僕は踏み躙る。 僕らの歪んだ愛を――。 じくじくと膿んだ愛を――。
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