episode250 愛と愛

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能面のような征司の横を通り過ぎる時。 多分無意識に征司は僕の手を掴んだ。 「行くな」 触れられた部分が火傷したみたいに熱くなり 突然に僕の涙腺に引火する。 鼻の奥にこみ上げる熱を覚えたまま 僕はその手を振り切った。 「さよなら」 それで――言うしかなかったんだ。 「さよなら、征司」 でないと僕が歩き出せなかった。
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