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 男の子でもこれくらいの人いるよね、という短さまで切った。  美容院を出るとそのまま服を買いに行った。男物の服を買うことにはかなりの度胸を要した。  でも「変身」を終えた自分の姿を鏡に映して、行幸は心底から満足した。行幸はあまり背が高い方ではなく、歳より幼く見られるので、こんな恰好は見映えがせず寧ろ滑稽に映るかと思ったが、無表情に見られがちな顔立ちのお陰か、意外と様になっているのだった。  ずっと前から決めていたことのような気も、衝動的に行動に走った結果のような気もする。どちらでもいいが、とにかく、勇気を振り絞ってよかったと。  髪を切って男の子の恰好をしたからといって、自分が自分でなくなるわけではなかった。行幸を見た人が、行幸が男なのか女なのか一瞬判別に迷っていることを感じ取っても、枕元にポムポムプリンのぬいぐるみは置いたままだし、そのベッドで寝て、いつもと同じ朝が来て、花壇の土いじりをする園芸クラブのおばちゃんにおはようと言って大学に行くし、スマホの乙女ゲームもやめられない。     
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